[インタビュー]「少女たちの“スタンド・バイ・ミー”、大学受験はあきらめても動物は手放せない!」『サンヤンデゥル(山羊たち)』のユ・ジェウク監督、パク・ヘジン(俳優)②

〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉が、子どもに頼まれた――ではなく、“猫をお願いして”〈猫をお願いして〉の女子児童たちの悩みと、道を切り拓いた〈スタンド・バイ・ミー〉の少年たちの冒険譚が出会う。そんなふうに見える純国産の成長映画だ。

パク・ヘジン 俳優(写真=シネマ・ダ)
パク・ヘジン 俳優(写真=シネマ・ダ)

インヘは、大学受験を前にしても家禽を世話するのに、まっすぐ熱を注ぎ込む子なんです。

パク・ヘジン 実は私も、勉強をそんなに一生懸命やるタイプではないので、インヘの行動にはすごく共感しました。(笑)正直、大学受験だからといって、みんながみんな勉強だけをするわけじゃないですよね。勉強以外にも、自分がやりたいことをして生きていく子もいるんです。インヘを見ていると、親しみをすごく感じました。

ユ・ジェウク監督 インヘは、実は僕の姿をかなり映したところがあるんです。僕は人のあとをよくついて回るほうで、誰かに頼まれるとよくやるタイプでもあります。映画の中のソヒみたいな、かっこいいキャラクターを見ると、ついていって一緒にやってみる――そういう感じも、僕と似ていると思います。インヘが飼育場の世話をするのも、最初はたまたま始めたとしても、不満なくずっと続けているように見えますしね。子どもっぽいところもあるけれど、自分が望むものがあるときには、かなり頑固に突き進む性格でもあります。後半で恋人に向ける行動も、どこか突飛だけど、普段僕がやりたかったことをインヘにやらせました。

パク・ヘジン インヘは、私ともすごく似ています。(笑)配給会社のシネマ・ダで予告編が上がったのを見て、私の知り合いの先輩から連絡が来たんです。「ただのインヘじゃない!あなたじゃない!」って言われました。口調や行動、それに感情の表し方が、実際の私の姿とすごく近くて、より親しみがありました。分析して出したというより、自然に表現したんだと思います。私はもともと話すのも遅いし、独り言が多いほうですが、それも似ていました。

ユ・ジェウク監督 オーディションで、最初のシーン――動物と話す場面のリーディングをやったんですが、それを見て、皆が後ろにひっくり返るくらいでした。あまりにもおもしろくて。まるで、もう一匹動物がいるような感覚でした。いわゆる「ナード」って言うでしょう。その姿がそのまま出ているんです。ヘジン俳優は、自分がナードだということを本人は知りません。脚本を書いていたとき、頭の中にあったそのままの姿に出会ったような気がしました。

〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉
〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉

この共感を土台に、二人の成長の道のりも同じように結びつけて見られそうですね。

パク・ヘジン 私は演技を9歳のときから始めました。もちろんその間にも、演技が嫌になったことはありました。それでも中学1年のとき、短編映画〈コンテナ〉(2018)を撮ったあとで変化が起きました。その作品で映画祭にもよく足を運ぶようになり、演技への興味がわいてきて、受験に踏み切ったんです。監督とは東国大学の先輩後輩の関係です。学校に入るまでの受験を何度も見てきましたが、その準備の中で、自分の進路についての見通しが立っていった気がします。いまでは、この仕事が私にとってなくてはならないものになったと思います。

ユ・ジェウク監督 僕は最初、映画を本当にしたいのかどうかさえ、わかっていなかったんです。高校2年ごろに、〈ライム・クライム〉を一緒に作った友だちのイ・スンファンくんの影響が大きかったですね。その友だちは映画をたくさん見ているし、映画科にも行くと言っていたので、「それって何?僕も映画館に行ってみないと。映画を作るのも面白そうだ」そんなふうに考えながら、自分の進路を固めていった気がします。大学に入ってからは、映画をずっと続けたい気持ちがさらに強くなりました。実は長編を準備しているときに、一度は大きくつまずいたこともあって、そのときは、それが自分の人生の傷みたいに感じることもありました。今は、条件が合わなかったり、準備が整わなかったからだろうと思うようになっています。あまりくよくよせず、やりたいことをコツコツ続けながら生きていくべきだ、と考えて取り組んでいます。

ユ・ジェウク監督(写真=シネマ・ダ)
ユ・ジェウク監督(写真=シネマ・ダ)

映画の舞台設定についても触れてみます。メインの舞台は、学校の飼育場とキャンプ場のシェルターです。成長映画には必ず出てくる“アジト”という点で、シェルターの設定も重要でした。とくに重点を置いた部分があるなら、そこですね。

ユ・ジェウク監督 都市のグリーンベルトみたいな場所を考えました。大人の手が届かず、自然が多いので、野生動物も出てきそうな感じがする。僕自身も子どものころ、そういう場所でよく遊んだんです。そこに少女たちのアジトを作れたらいいなと思いました。シェルターは傾斜の多い地形で、この子たちは少し“曲がった感じ”のキャラクターだと考えると、空間もそれに似た雰囲気になるんじゃないか、と感じました。この地形をうまく生かそうと思ったんです。

パク・ヘジン シェルターを思い出すと、本当に寒かった記憶がよみがえります。10月から撮影を始めましたが、水に入るシーンは11月に撮ったので、さらに寒かったです。それでも撮影現場は楽しかったですね。なにより、うちの俳優たち4人の息がぴったり合ったこと。撮影現場ではお菓子もたくさん食べました。(笑)衣装チームやメイク(分場)チームの先輩たちとも、すごく仲良くなれて、私たちのことをたくさん気にかけてくれました。一緒に写真もたくさん撮って、本当にたくさん仲が深まったと思います。監督ももちろん現場では非常に忙しかったですけど。(笑)

ユ・ジェウク監督 自然環境をできるだけ見せようとして木々が多く写るように撮りましたが、動物たちは背が低いので、この2つを1つの画面に収めるため、アスペクト比にも工夫を入れました。2.35:1や1.85:1ではなく1.6:1として、上下の画面を少し高くして撮っています。その判断によって、友だち同士の演技がさらに調和よく見えるようになった気がします。

〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉

人の俳優が担う役割と同じくらい、動物俳優たちの存在感も大きい作品です。コントロールはうまくいきましたか。

ユ・ジェウク監督 “ラングラー・チーム”という、専門の動物演技担当の所属があります。とはいえ、アヒルやニワトリは犬や猫のように調教や訓練ができないので、彼らが用意されるまで待つしかありませんでした。俳優たちがまじめな演技をしていると、アヒルが「クワッ」と鳴いてしまって、NGがたくさん出ました。

パク・ヘジン アヒルは2羽いたんですけど、1羽が鳴くともう1羽も後を追うように鳴きます。お互いを探すような感じです。メイキング映像を見ると、テイクが切り替わるたびに、スタッフの周りの機材がどんどん増えていくんですが、待機していて、こちらで捕まえないといけないからです。

ユ・ジェウク監督 本当に、アヒルを捕まえるためにあちこち走り回りました。(笑)囲いの中に入れても、みんな脱走してしまって。

〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉
〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉

陽気な冒険譚のように進んでいく物語の裏で、家庭内暴力の問題や殺処分の問題など、深刻な問題ももちろん存在します。とくに、実際の殺処分シーンが登場することによる衝撃は大きかったです。トーン&マナーから大きく外れる場面でもありました。

ユ・ジェウク監督 僕は、そうしたリアルなフッテージを作品に入れるのが、ちょっと好きなんです。見るのがつらい映像だと考えています。それでも、観客に対してあえて不快なものを見せたいと思っていました。鳥インフルエンザや口蹄疫のようなものは、私たちはただ言葉で聞いているだけではなく、実際に見るのは簡単ではありません。わざわざ見ようともしないでしょう。ですが、この映画を見る人たちだけは、私がその時間を借りて、ほんの少しでも見せたい。そうすれば、それを見て、少しでも自分もこの動物たちを救いたいという気持ちになるのではないか、と思いました。

〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉
〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉

結局、成長映画は冒険と旅の終わりに、自分の変化に出会う。恋人に位置追跡されていたインヘも、自分の道を見つけていきます。

パク・ヘジン 序盤、チャ・ヨンイ(チョンヒョンイ)に振り回されるインヘを見て、私ももどかしく感じました。(笑)でも、理解はできます。当時は友だちがいなかったから。唯一の友だちがチャ・ヨンイだと思っていて、頼りにして、期待してしまったんです。私に何か言われてもガスライティングされても、ついていっちゃったわけです。けれどシェルターを作って、3人の友だちに出会って、自分なりの世界観が定まっていきました。その過程で、インヘが自分で立ち上がれるような正しい関係性を作っていったと思います。彼女たちがいたからこそ、チャニョンイに対しても、きちんと勇気を出して関係について話せたんじゃないかと思います。

ユ・ジェウク監督 この映画を作りながら、キャラクターはさまざまであってほしいと思いました。動物を救うとしても、各々が抱える理由が違っていたらいい。少し利己的かもしれないけれど、そういう出発点で始めようと思ったんです。始まりは少女たちが自分を救うところからですが、それがほかの誰かを救うことに置き換わっていって、結局は自分の安らぎの居場所を見つけられたらいい、という流れで物語を作っていきました。

ユ・ジェウク監督、パク・ヘジン、イ・スンヨン、パク・ヒョウン、チェ・スイン 俳優(左から、写真=シネマ・ダ)
ユ・ジェウク監督、パク・ヘジン、イ・スンヨン、パク・ヒョウン、チェ・スイン 俳優(左から、写真=シネマ・ダ)

〈サンヤンデゥル(山羊たち)〉で観客の皆さまとお会いする思いも、最後にお願いします。

ユ・ジェウク監督 もう記者試写会も終わって、長い道のりが終わったような気がします。共同で演出したり、一人で立つようになったりして、寂しいと思うときもありましたが、ある意味では自由な制作でもあって、新しい経験にもなりました。〈ライム・クライム〉の公開のときはコロナ禍で、観客の皆さまに会うのが難しかった記憶があります。今回は〈スパイダーマン〉もありますが、それでも観客の皆さまと自由に会うことができて、気分がいいです。

パク・ヘジン 前作〈生まれてよかった〉(2020)のときもコロナで残念でしたが、この映画では釜山国際映画祭でレッドカーペットも踏んで、いろいろな経験ができたように思います。少し前に誕生日でしたが、誕生日プレゼントをもらった気分です。(笑)記者試写会で久しぶりにスタッフの皆さんに会って、席に座ったとたん、涙がすうっと込み上げてきました。本当に、いい思い出として残る作品です。観客の皆さまと一緒に、この気持ちを分かち合いたいです。

映画人

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2026/7/28

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インヘは、大学受験を前にしても家禽を世話するのに、まっすぐ熱を注ぎ込む子なんです。パク・ヘジン 実は私も、勉強をそんなに一生懸命やるタイプではないので、インヘの行動にはすごく共感しました。(笑)正直、大学受験だからといって、みんながみんな勉強だけをするわけじゃないですよね。勉強以外にも、自分がやりたいことをして生きていく子もいるんです。インヘを見ていると、親しみをすごく感じました。ユ・ジェウク監督 インヘは、実は僕の姿をかなり映したところがあるんです。僕は人のあとをよくついて回るほうで、誰かに頼まれるとよくやるタイプでもあります。映画の中のソヒみたいな、かっこいいキャラクターを見ると、ついていって一緒にやってみる――そういう感じも、僕と似ていると思います。インヘが飼育場の世話をするのも、最初はたま

[インタビュー]「少女たちの『スタンド・バイ・ミー』、受験はあきらめても動物は手放せない!」『山羊たち』ユ・ジェウク監督、パク・ヘジン俳優 ①
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2026/7/28

[インタビュー]「少女たちの『スタンド・バイ・ミー』、受験はあきらめても動物は手放せない!」『山羊たち』ユ・ジェウク監督、パク・ヘジン俳優 ①

2001年 〈『猫をお願い』〉の少女たちは、今ごろ何をしているだろうか。そういえば、もうすでに大人になっているはずだ。どこかで必ず元気に生きていてほしい。とはいえ、いまだに野良猫の世話をしていた夢想家テヒ(ペ・ドゥナ)の系譜たちは、どこかでまた新たに生まれ、育っている。ユ・ジェウク監督の 〈『山羊たち』〉は、 〈『猫をお願い』〉の少女たちの胸のうちや悩み、そして旅立った 〈『スタンド・バイ・ミー』〉の少年たちの冒険譚が交わったような、韓国の“在来”の成長映画だ。​

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