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高級ポスターとの落差で拡散 中国でヒットしたCGアニメ『ニウライ』

8月18日現在、中国の映画ボックスオフィスサイト『ピアオファン』のランキング
8月18日現在、中国の映画ボックスオフィスサイト『ピアオファン』のランキング

8月5日に中国で公開されたCGアニメ映画 〈ニウライ〉(牛来)は、粗い映像表現がSNS上で話題となり、公開10日で1000万元を売り上げた。いわゆる「バムティ」という新語が流行している。由来から用法までやや可笑しく切ないこの「バムティ」は、あるソーシャルゲームで「バムティ」というニックネームのユーザーがキャラクターを特に奇抜にカスタマイズしたことに端を発する言葉だ。良く言えば個性があるが調和しない、悪く言えばただ極端に不格好で印象的であることを指す。そうしたバムティの流行が中国にも波及し、主人公の造形が注目を集めることで興行面でも手応えを得た。どのような作品で、なぜこうして口コミが広がったのか。


〈ニウライ〉の唯一の宣伝物、ポスター
〈ニウライ〉の唯一の宣伝物、ポスター

〈ニウライ〉のポスターは水墨画風のアートワークで職人の技を期待させる。さらに2人で5年かけて完成させたという制作秘話からも、並々ならぬ映画性が滲んでいるように思える。しかし予告編やスチールカットを一目見れば「これが劇場公開作品なのか」と首をかしげたくなるほどのクオリティであるのも事実だ。1995年公開で、世界初の3D長編劇場アニメのタイトルを持つ『トイ・ストーリー』と比べても及ばないどころか、当時のCGテスト映像のようにも見える。現在上映中の作品であるという説明より、CG黎明期に作られた試作映像という説明の方がしっくり来るほどだ。

〈ニウライ〉
〈ニウライ〉
SNSで出回った 〈ニウライ〉 の実際の本編場面

ところが皮肉なことに、この不格好さがあまりに印象的だったため中国のSNSを揺るがした。宣伝はポスターのみで、予告編などを出さなかったため、劇場で観客がこっそり撮影した場面がSNSに流出し、実態が明らかになった。見た目は子牛だが肌は黄色味を帯び、どこか真面目な顔つきの主人公が人々の好奇心を誘った。物語は臆病なニウライがヒョウと友達になり、オオカミたちに立ち向かって勇敢な子牛へと生まれ変わるという筋立てだ。非常に定型的なアニメーションに見える一方で、宣伝やマーケティングがほとんど行われなかったため、人々は実際にその作品を観る以外にどのような作品か知る術がなかった。

こうしてSNSで話題になった 〈ニウライ〉は、公開直後は客が入らず打ち切り寸前の状況に陥ったが、上映回数を増やす“逆行”に成功し、10日で1000万元(約2億ウォン)の興行成績を残した。併せてこの映画に関する制作者たちの物語まで報じられるほど注目を集めた。


前述の通り、〈ニウライ〉は2人で制作した作品だ。この二人はアニメーションや関連の専門教育を受けた者ではない。監督兼制作兼声優のシン・ユーメン(信雨萌)と脚本兼声優のソン・リーファン(孙丽芳)は母子だ。シン・ユーメンはもともと造園学を学び関連事業を営んでいたが、2021年に事業内容をメディア制作に転換しアニメ制作に着手した。母であるソン・リーファンが制作を手伝い積極的に支援した(エンディング曲も実際に歌っている)。制作開始の2021年が丑年で、シン監督の父親が牛年生まれであることから縁起を担ぎ牛の物語を構想したという、企画の段階から珍しい事情があった。

〈ニウライ〉 手描きポスター(出典=X)
〈ニウライ〉 手描きポスター(出典=X)
劇場側も 〈ニウライ〉 の手描きポスターを作り、バムティらしさを強調している。(出典=X)

5年かけて制作したアニメがバムティそのものだったにもかかわらず、どのようにして劇場公開に至ったのか。劇場公開には、配給業に携わる知人のつてが働いたとみられている。配給会社は公開を見送るよう勧めたが、シン監督の意志が強く最終的に劇場公開に至った。宣伝は限定的だったが、高品質のポスターと本編の粗さが逆説的に相乗効果を生み、興行面で成功した。シン監督は 〈ニウライ〉の成功を「99.9%は幸運だ」と語り、現在も家族のみの制作体制で新作を制作中で、今回も外部資本を入れず家庭内で製作する予定だと付け加えた。

〈ニウライ〉 パロディ作品(出典=X)
〈ニウライ〉 パロディ作品(出典=X)
〈ニウライ〉を映画 〈オデッセイ〉(左)、〈終わらない映画〉のポスターと組み合わせたパロディ作品(出典=X)

成功譚のような 〈ニウライ〉には、突如のヒットを巡りさまざまな疑惑が付きまとっている。ある者は、シン・ユーメンが事業がうまくいかなくなったため政府のアニメ制作支援を受ける目的で業種を変更し制作したのではないかと分析している。親子が暮らす大連は半導体産業が好調で既存産業が相対的に衰退する傾向にある。中国はアニメ制作に最大で2億ウォン相当の支援金を出すとされるが、現時点で制作会社は支援金の有無を正確に明らかにしていないという。また、中国では劇場公開のために事前審査を経て許可を得る必要があり、この過程にも難点があるため配給過程に不審の目が向けられている。何より、このような完成度の作品が劇場にかかることは、フィルター役を果たすべき劇場・配給会社の信頼低下につながるという厳しい批判も出ている。

それでも 〈ニウライ〉の成功は、21世紀の劇場文化が新たな形を見せた明白な例だ。ミームとして嘲笑されて失敗に終わることはあっても、それが逆に大当たりする例は多くない。〈ニウライ〉は低品質ゆえに人々の注目を集めたが、「同じ空間で同じものを見て楽しむ」劇場文化の別の側面を露呈したとも言える。いつかNetflixが買い取り、世界中にバムティの魅力を広めてくれることを願う。

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