
ある物語は守りたい。キョンロク(ムン・サンミン)とミジョン(コ・アソン)の小さく質素な愛をヨハン(ビョン・ヨハン)が最後まで守ろうとしたように、私にはすでにない何かを今もなお抱えているから。パク・ミンギュ作家の長編小説 「死んだ王女のためのパヴァーヌ」を脚色した映画 〈パヴァーヌ〉はかつて輝いていた青春のノスタルジーと愛する人を失った喪失感を共に描く。映画に引用されたそれぞれの音楽を味わっていると、キョンロクとミジョンの愛が純粋に芽生え、色あせていく行路をたどることができる。 〈パヴァーヌ〉は映画と音楽、すべての芸術が似ようとした愛と喪失の美しい二重モザイクだ。


〈パヴァーヌ〉は心の傷で自分さえも背けた三人が互いに光のように染み込みながら、人生と愛に向き合う物語だ。陰鬱な印象のせいで幼い頃から人々の不快な視線を耐えてきたミジョンは、大人になってもなお心の扉を固く閉ざして生きている。就職成績1位で入社した百貨店でも、暗い地下倉庫に追いやられ「恐竜」と呼ばれながらからかわれる。父に見捨てられた傷を抱えて生きるキョンロクは百貨店の駐車係として働きながらミジョンに出会い、彼女に惹かれる。そして自由奔放な変わり者ヨハンが二人の間を行き来する。ケンタッキー・ホープで心の内を打ち明けながら近づいた三人はいつの間にか互いに懐中電灯のような光となる。
愛を始めるときのときめき、
エミール・バルトークのワルツ『レ・パティネリ』


月夜にキョンロクがミジョンを思いながら踊るときに流れる音楽、エミール・バルトークのワルツ『レ・パティネリ』(Les patineurs, Op. 183 "Skater's Waltz")は、今まさに片思いを始めたキョンロクのときめきに満ちた心を軽快なメロディで表現する。バルトークが冬のパリのブローニュの森で氷上を滑るスケーターたちの動きとその風景からインスピレーションを受けて作曲したこの舞曲は、スケーターたちのバランス感覚のある優雅な動きに似ている。導入部のゆっくりとしたメロディが徐々に3/4拍子のワルツに転換され、これは重く沈んだ日常から芽生えるキョンロクの愛を効果的に表現している。19世紀パリ上流社会の冬祭りを通じた純粋な娯楽の瞬間は、踊る青春の自由さへと、愛を始めた未熟な者の永遠のような喜びへと変貌する。
静かな湖に揺らぐ波紋、
クロード・ドビュッシーの『アラベスク』

クロード・ドビュッシーの『アラベスク』(Arabesque No.1)は、キョンロクの求愛で動き始めたミジョンの心を表す。映画の中のラジオDJはこの曲を「静かな湖に石を投げたように、心に穏やかな波紋が広がるような、馴染みはないがときめき、また不安だが夢幻的で美しい曲」と紹介する。簡単に心を決められずに悩んでいたミジョンのため息が落ちると、すぐに『アラベスク』の爽やかなアルペジオが流れ出し、彼女の心に波を起こす。 〈パヴァーヌ〉は『アラベスク』が流れるこのシークエンスで、すでに恋に落ちてしまったミジョンの心を説明なしに表現する。

ドビュッシーの初期作品であり、初のピアノ集である『アラベスク』は印象派音楽の原型を示す。彼はアール・ヌーヴォー美術のアラベスク模様とローマ旅行で見た森、海、風によって動く自然のイメージを音楽に投影しようとした。映画の中の夜明けの太陽、動く雲、風に揺れる熟した果実のイメージモンタージュは自然のイメージを持って実験した曲『アラベスク』を視覚的に表現する。モンタージュは曲のアルペジオ音型のように流麗に流れる。また消毒車から噴き出した煙に包まれたミジョンの姿は、愛の夢幻的な状態に陥った彼女の心理とこの曲の印象主義を効果的に表現する。
彷徨う青春の孤独、
シューベルトの歌曲『ボリス』

シューベルトの歌曲『冬の旅』の中の『ボリス』(Die Winterreise Op. 89, D. 911: Der Lindenbaum)は、失恋した旅人が冬の荒野を彷徨いながら経験する彷徨と孤独を歌う。音楽の語り手である旅人は寒い冬の道を歩きながら、故郷の村のボリスを見て、過去の恋人との温かい思い出を思い出す。彼はボリスを離れられず、そこに留まり傷ついた心と孤独を抱えている。ボリスの下の安息は永遠の安息、死の気配をもたらすこともある。シューベルトが息を引き取る1年前に作曲した曲であり、彼の病によって衰弱した状態の孤独と絶望が込められている。『ボリス』は自らの死を予感したシューベルトの遺言である。

劇中で曲『ボリス』はヨハンが常連のケンタッキー・ホープで店主に自分の過去を暗示した話をした後に登場する。彼の自由な性格の裏にはひどい孤独が隠れている。キョンロクとミジョンが互いの日常を共にする間、ヨハンは依然として彼らと共にいたケンタッキー・ホープに残り、ボリスで過去の思い出を回想する旅人のように輝いていた青春の記憶を思い出す。
すでに消えた光への切ない回想、
モーリス・ラヴェルの『死んだ王女のためのパヴァーヌ』

モーリス・ラヴェルの『死んだ王女のためのパヴァーヌ』(Pavane pour une infante défunte (M. 19))は映画の情緒的中心軸として存在し、映画全体に優雅な悲しみとノスタルジーを吹き込む。この曲はキョンロクとミジョンが愛を始めるきっかけとなり、二人の関係の進展とともに音楽の遅いテンポと重厚なリズムで映画の動力となり、静かに頂点に向かって進んでいく。またユートピアを自称する華やかな百貨店地下の生を優しく包み込む。


ラヴェルは古いスペイン宮廷の幼い王女が踊ったであろうパヴァーヌを思い浮かべながらこの曲を書いたと言われている。すでに消えた美しさへの回想を込めたこの曲は映画 〈パヴァーヌ〉で記憶の彼方に消えた思い出の切なさ、去った人への想い、人生の儚さを描き出す。『死んだ王女のためのパヴァーヌ』の5度並行(2つのメロディが5度間隔を保ちながら同じ方向に動く和声技法)など、ラヴェル特有の印象派技法は実在ではなく記憶と想像、曖昧な夢を連想させ、遅い拍子と重厚なリズムは遠くから眺める過去の場面のように感じさせる。また古典的な重厚さと印象派の色彩が融合した音楽は映画の陰のある青春に宿命的な感覚を与えつつ、青春の喪失感とノスタルジーを完璧に増幅させる。


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