《幼稚園WARS》をひと言で評するのは難しい。まず浮かぶのは「面白い」という感想だが、それだけでは収まらない。笑える、甘い、怖い、残酷――一見して結びつかない言葉が並ぶ。いったいどんな漫画かと思う読者のために、まず作品名を挙げると 「幼稚園WARS」だ。

作家のチバ・ヨウ(You Chiba)が2023年から連載している 「幼稚園WARS」は、タイトルから想像するような天真爛漫な内容ではない。「幼稚園WARS」は、かつて「魔女」と呼ばれた天才キラー、リタが、有名人の子どもたちが通うブラック幼稚園の特殊教員として過ごす中で起きる出来事を描く。この世界では、危険な犯罪者は収監の代わりに、ブラック幼稚園の特殊教員として子どもたちを守る任務に就く。犯罪者が幼稚園教諭という発想はかなり刺激的に思えるが、子どもを狙う外部勢力が次々と現れるため、幸いにも(?)内紛や裏切りといった展開は起きない。特殊教員たち自身が、独特の純粋さを備えた人物として描かれているからだ。

基本的に「幼稚園」と「犯罪者」というまったく似つかわしくない組み合わせを選んだ 「幼稚園WARS」は、そのためか図々しいほどにコメディを強調する。例えばリタは生涯の理想の相手を夢見ており、子どもを狙う相手であってもイケメンならまずは質問を投げかける。どれほど自分の好みにぴったりかを確かめるためだ。リタに銃口を向けられた相手が正直に答えたところ、リタの好みとまったく逆の答えをするとそのまま撃たれて死亡する。文章で追えば殺伐とした場面も、「幼稚園WARS」では誇張の効いた演出で痛快に転じる。死ぬのはともかく子どもを狙う悪者ではないか、と思う一方で、よく考えればリタ自身も悪女なのだ……という微妙な善悪や道徳と非道徳の境界を曖昧にする点も、「幼稚園WARS」の魅力である。

その第一段階がコメディなら、次は一種のロマンスである。命がけの職場という設定は、いわば吊り橋効果を生むのだろうか。生涯の理想の相手を探すリタが、天下の詐欺師ダグと少しずつ先輩後輩の関係を越えていくように、登場人物たちはそれぞれ愛の物語を抱えている。警察出身のルークは無表情の裏で恋愛漫画を好む純情派だし、ヨシテルとシルビアは、会うたびに告白しては振られる仲だ。このようにコメディやラブコメディに重心を置きつつ、「幼稚園WARS」は恐ろしく見える設定を軽やかに楽しめる雰囲気へと導いていく。

もちろん描写はそうだが、「幼稚園WARS」は非常に冷徹な世界の一面を見せる。利益のためなら幼い子どもに手をかけようとする勢力もいれば、そうした子どもたちを守る特殊教員もまた犯罪者という点で同列だ。キャッキャとやり取りする特殊教員たちも、物語が進むに連れて自らの過去や因縁に直面する瞬間を迎える。そこから空気は一変する。互角の戦いのなかで、自分や仲間、そして子どもたちの命を守るため、文字どおり死力を尽くさなければならない。ここで展開されるのは能力バトルものに匹敵する超現実的なアクションシーンの連続であり、アクションの爽快感を与えると同時に登場人物たちの物語性によってこの漫画が単なるコメディにとどまらない深い余韻を残す。
ある意味でこうした多様なジャンルの見せ場は荒唐無稽に感じられるかもしれない。最初から真剣にやるべきだ、あるいはもっとやりすぎてもいいのではないかと考える人もいるだろう。ただ雑多に見えるようで、この適度なジャンルの綱渡りこそが 「幼稚園WARS」の魅力だ。残酷な状況をコミカルに消化し、胸を締め付ける過去を誇張されたアクションで昇華させることは、漫画という媒体の特性を活かし、非現実的な表現のなかに現実感を的確に取り込んでいると感じる。

現在16巻まで正式に刊行されている 「幼稚園WARS」は、物語の最終盤にほぼ到達している(作者もSNSで最終章であると述べている)。今読んでおきたい理由は明快だ。2027年4月にアニメ放送が控えている。漫画界を席巻するシリアスな少年漫画や異世界ものに飽きたなら、ラブ、コメディ、アクション、ノワールを程よく混ぜ合わせた 「幼稚園WARS」を楽しんでほしい。あわせて外伝の 「幼稚園WARS LUKE」もあるので、本編が気に入ったら忘れずにチェックしてほしい。ちなみに紙の単行本で読むなら、カバーを外して見返しも確認することをおすすめする。



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